「フィロのス」元メンバー・十束おとはさんの好きなものを本気で突き詰めるキャリア 〜タレントキャリアアドバイザー 別府 彩が聞く!〜
「フィロソフィーのダンス」を卒業したばかりの十束おとはさん。
現在はゲーマータレントとして、MCなどもこなしながらエンタメ企業のesports関連部署で働いています。卒業後もなお精力的に活動のフィールドを広げる十束さんがどのようにキャリアを切り拓いていったのかを伺いました。
十束おとは
8月9日生まれ。「フィロソフィーのダンス」元メンバー。
2022年11月19日に日比谷野音での卒業コンサートでグループを卒業。
この記事の監修者
元フリーアナウンサー/タレント。
大学卒業後、およそ10年間フリーアナウンサーとして活動。31歳のときにグラビア写真集「彩色」(竹書房)を出版。
「踊る!さんま御殿!!」(日本テレビ)に出演するなど、バラエティ番組やラジオパーソナリティ、テレビCMナレーターなどの経験を持つ。
33歳で芸能界を引退、広告代理店に正社員として就職。イベント運営会社、イベントコンパニオン事務所を経て2020年に株式会社エイスリーに入社。
現在は、アナウンサーから会社員という自身の転職経験を活かし、日本初の“タレントキャリアアドバイザー”として、芸能人やクリエイターのパラレルキャリア・セカンドキャリアのサポートを行っている。
Twitter
https://twitter.com/a3_ayabeppu
目次
7年以上活動したアイドルグループを卒業、いま新たにスタートしたチャレンジ
―― 先日、十束さんのTwitterで拝見したのですが、まさに今、キャリアコンサルタントの資格取得に向けて勉強なさっているのですね。転職や就職希望者に、職業選択や能力開発に関して助言する資格で、カリキュラムをこなすのも大変ですよね…。
そうですね。4月から通学での授業が始まるのですが、事前に映像カリキュラムがあり、毎日ちょっとずつ勉強しています。(※2023年3月にインタビュー)
想像していたよりも膨大なボリュームでちょっと驚いています。
―― キャリアコンサルタントの資格を取得しようと思ったきっかけはどんなことだったのでしょうか。
アイドルとして活動していた時に、ラジオNIKKEIの「シューカツHANGOUT!」という番組で、就職活動をしている方のキャリアのお悩みを聞く機会がありました。あの頃は自分の経験則でしか物事をアドバイスすることができなかったのですが、もうちょっと本格的にアドバイスしたかったなという気持ちがずっとあって。
そこで、キャリアコンサルタントという資格があることを知りました。アイドルを卒業した今なら通学する時間も作れるなと思ってチャレンジすることにしたのです。
もう一つはアイドルなど芸能人と関わることが多く、そういう環境で自分も活動する中でセカンドキャリア支援に興味が沸き、きちんと資格をとって学んでみたいと思ったからです。
大学卒業後は企業に就職。アイドルになるなんて微塵も思っていなかった!?
―― 過去に戻ってお話を伺いたいのですが、十束さんはどのようなきっかけでアイドルの世界に飛び込んだのでしょうか。
元々は普通の大学生でした。その頃はアイドルになりたいとか芸能活動したいという気持ちはまったくなくて、就職活動をして企業に就職しました。
でもその会社が合わなくて…辞めてしまって、そのまま引きこもりのニートの期間がありました。精神的にも社会復帰するのは難しそうだなと思っていたのですが、ちょうどそんなタイミングで好きなゲームの応援団(電撃FIGHTINGガールズ)のオーディションがあり、まずはそれをきっかけにしてみようと受けてみたら合格したのです。
メンバーとして活動していくうちに、一度芸能界に入ったのだから好きなことを全部やってみたいと思うようになりました。
元々アイドルが大好きだったので一度挑戦してみよう、ということで「フィロソフィーのダンス」のオーディションを受けたら合格してアイドルになった、という感じです。
―― 好きなことを追いかけていったらアイドルにたどり着いたってことなのですね。十束さんはどんなアイドルが好きでしたか。
でんぱ組.incさん、ももいろクローバーZさん、私立恵比寿中学さんなどが大好きで、アイドルフェスにも行っていました。特典会にも参加するようなアイドルオタクでした。
―― でも当時は、なりたいとは思っていなかったのですね。
全然思っていませんでした。私はオタクとして応援する側であって、アイドルになる姿を想像したこともありませんでしたね(笑)
―― 「フィロソフィーのダンス」の活動をスタートして、一人だけ未経験で苦労されたと耳にしているのですが、いかがでしたか。
私はステージに立つ経験をしたことがなかったので、初めてライブに出たときも、人の目がこんなにいっぱいあるのかと緊張してしまって。ステージの前と後ろがどっちか踊っているうちにわからなくなっちゃうくらいでした(笑)
更に良いライブをするために身体作り、体力作りをしなければならず、思い返せば楽だったことはあまりなかったと思います。でも、そんな大変だったことを忘れてしまうくらいに楽しかった7年間でした。
―― ファンの方がたくさん見に来てくださるようになるまでの苦労もありそうですよね。
最初のころは、1,000人以上入れるほどの広いライブハウスに、平日の夕方の対バンライブ(1つのライブに複数のアーティストやバンドが出演する形式のイベント)で数人しかいない、なんてこともよく経験しましたね。
―― それはやりにくそうですね…。
でも最初は何事もそういうところから始まるよねって思っていましたし動員が少なくても頑張っているうちに増えていくものだと自身がアイドルオタクだったことからそう思っていたので、そこまで辛いと感じていませんでした。
―― なるほど、見る側を経験していたからこそわかる部分もあったのですね。
そうですね、とにかく頑張るしかないなって。
―― そういう経験も経て、印象に残っていることはどんなことでしょうか。
ワンマンライブは強く思い出に残っていますね。
自分たちのことを好きな人たちだけで、こんなに広い会場を埋められる経験って他にないだろうなって思いました。会場が一つになる瞬間みたいなものって、やっぱりアイドルオタクとしてフロアで見ているものとは全然違いました。
ああ、こんなにも尊いことだったんだなってステージに立って初めてわかる感情があって。すごくいいものだと思いましたね。
―― ステージに立った方にしかわからない感情かもしれませんね。そのワンマンライブはどのくらいの人数だったのでしょうか。
最後、私の卒業ライブは日比谷公園大音楽堂で開催したのですが、立ち見席も埋まるくらいに満杯でした。こんなにいっぱいの人、見たことないなって思っていたらすぐライブが終わっちゃった印象です。実質2時間くらいのライブだったのに、体感は2秒でしたね(笑)
アイドルからのセカンドキャリア。好きなゲームを仕事にしたい思いを実現
―― それだけ充実した時間だったのでしょうね。卒業されて、アイドル時代を振り返ってみて、身についたスキルや成長した部分というのはどんなことでしたか。
身についたのか元々そうだったのかわからないですが、メンタルが本当に強くなったと思います。人前に出ても緊張しない度胸。誰になんて思われてもいいからここで自分は前にでなきゃいけない、みたいなパワー。それが芽を出して花開いた感じですね。
あとは、初対面の方とコミュニケーションが取れるというのは、ファンの方との特典会をたくさんさせていただいた経験の賜物だと思います。ファンの方たちのおかげですね。
―― アイドルになったきっかけとして「好きなことをやりきりたい」という言葉があったのですが、卒業しようと決めたきっかけはどんなことでしたか。
アイドルになってからはただ一生懸命に目の前のことを消化していったら時間が過ぎていった感じで、辞めるという選択肢はずっとありませんでした。
きっかけは体調を崩したことです。この状態では100%のパフォーマンスをすることが難しいと感じました。そのため、自分が一生懸命できるところでアイドル人生を終えたいなと思って相談したのですが、メジャーデビューのタイミングと重なってしまい…、3年後くらいに卒業しました。
―― アイドルは身体、精神どちらも健康を維持し続けるのがハードなお仕事ですよね。ところで、卒業してからの次のキャリアは考えていましたか。
ふんわりと胸の中にはあったので割とすぐに決まりましたね。元々アイドル活動をしながらゲーム関係のお仕事をしていたのですが、卒業後は改めてゲーム関連のお仕事に携わっていきたいなと思っていました。
そのことをお世話になっている方に相談したら、一緒にやりましょうと言っていただけて働き始めたのが今の会社です。
―― これまで、表舞台に立っていた十束さんが裏方に回るとなると、色々と経験が活かせそうですよね。
企画を立てる時に、どんなゲストをお呼びしてどんな企画をするかというのを先輩と一緒に考えることがあるのです。
その際に「出演者の立場からすると、こういうところは気になるかもしれないな」というような、表に立っていた私だからわかる意見を伝えた時、少しは役に立てているのかなと思ったりしていますね。
―― 出演側と裏方の両面がわかる人材ってなかなか稀有ですよね。十束さんが手掛けたイベントだから安心して参加したい、一緒に仕事したいって信頼を得られますよね。
そう思っていただけるように頑張ります!
自分が経験したことを活かし、芸能界からのキャリアチェンジに悩む人を支えたい
―― 十束さんは大学卒業後に一度ご就職されていますが、アイドルから企業への転職に関して思うところはありますか。
180度まったく違う世界だなと感じます。アイドル活動は歌って踊って終始動いていましたが、会社員になってからは座って会議することも多く最初は違いに慣れるのに必死でした。
私はアイドル時代からガジェットやPCとか大好きだったので難なく入っていけたのですが、アイドルの子が資料を作ってといきなり言われたら…そりゃ大変だなと(笑)芸能の仕事から転職した時にここで躓く人は多いのかもしれないなと体感しました。
―― 十束さんは現在も表舞台・裏方の両面で仕事をされていますが、今後かなえたい夢はありますか。
今、コラムを書いたり、MCやモデルをしたり、ゲームの番組に出たり、裏も表も色々なことを日々やらせていただいています。
今後は裏方も出演側も頑張るのはもちろんのこと、いつかキャリアコンサルタントとして様々な方のキャリア形成をサポートできたらなと思っています。頑張ります。