国内外で人気の日本アニメ。アニメ制作がどのように行われているのか、工程や関わる職種を解説します
目次
アニメ制作の流れとかかる時間
①企画・構想
どのような作品にしたいのか、テーマやコンセプトを決める期間です。ビジネスモデル的にどのように収益化するか、などもこの際に確定されることもあります。
プロジェクトメンバーで共通認識を形成するために打ち合わせが行われるほか、キャストオーディションなどが行われる場合があります。
企画の規模にもよりますが、契約開始から企画・構想が完了するまで1~2週間程度かかります。
②脚本・シナリオの制作
決められた企画・構想をもとに、話の大まかなプロットを決めます。プロットをもとにして、「誰がどんなセリフを言うのか」という詳細まで、脚本家やシナリオライターが決定していきます。
脚本家やシナリオライターは、一つの作品に複数人が関わることもあれば、作品の大部分をメインライター1人で担当する場合もあります。
シナリオチームでの連携具合や、筆が早い・遅いといった脚本家ごとの特徴もありますが、だいたい1週間~2週間程度かかります。
絵コンテも、この段階で作成されることがほとんどです。
③デザイン
キャラクターデザイナーが、登場キャラクターや新キャラクターの衣装設定などを行います。
通常であれば、1週間程度かかる作業ですが、クライアントからリテイクが多かったり、こだわりが強いデザイナーだったりする場合は、もう少し時間がかかるでしょう。
逆に、スムーズに進めばもっと早く完了することもあります。
④素材作成
絵コンテとデザインをもとに、実際にアニメーションの元となる素材を作成します。
素材作成は、さらにいくつかの工程に分かれています。以下で工程を確認してみましょう。
・レイアウト(LO)
絵コンテと原画をつなぐ設計書のようなものを作成する工程です。
・原画
レイアウトをより精密にした、原画を制作します。カット割り単位で作られ、ここを担当するアニメーターは原画マンと呼ばれています。
・動画
原画と原画の間を埋める画を作ります。日本のアニメの場合、1秒間に8枚の画が使われることが一般的です。ここを担当するアニメーターは、動画マンと呼ばれています。
・色付け
できあがった画に色を付ける工程です。
・背景
人物などの動きがある画ではなく、動かない背景画を作成します。
上記のような工程で素材が作られていき、素材作成全体で1.5ヶ月~2ヶ月程度かかります。近年ではPCソフトや技術が進歩したこともあり、もう少し短くなることもあります。
⑤編集
各素材を組み合わせ、「1話分の動画」に編集し、撮影する工程です。CGなどの特殊効果もこの段階で組み込まれます。編集にかかる時間は、1週間程度です。
⑥声の吹き込み。ナレーションの収録
この工程は、「MA」または「ダンピング」とも呼ばれています。できあがった動画に音声を入れる工程です。
声優さんの声を収録し、BGMや効果音も動画に乗せて、作品としての仕上げを行う作業です。
多くのアニメーション制作の場合、この工程は1週間以内に終わります。
また、場合によっては絵コンテの段階で声優さんの音声だけ収録しておく、という手法を取ることもあります。
⑦試写・納品
関係者間で試写を行い、プロデューサーやテレビ局の責任者に、放映しても良いかどうかの判定をしてもらいます。ここでリテイクをもらった場合、修正を行います。
1週間程度かけて試写→修正→再試写を行って納品することもありますが、修正がなければ1日で終わることもあります。
一般的に、放映日の1週間前から3日前を目安に、納品がされます。納期は確実に守らなければならないため、余裕をもって放映日の2週間前に試写が行われることもあります。
一般的な30分のTVアニメの制作には3ヶ月程度かかる
ここまでご紹介したのは、一般的な30分のテレビアニメのスケジュールです。各工程が短くなったり長くなったりしますが、3ヶ月程度で制作が行われるケースが多いでしょう。
特にクオリティにこだわる作品の場合は、制作期間を長く取ることもあり、反対にスケジュールに余裕がない場合には、時間を切り詰めて制作されることもあります。
なお、長編作品や、長期間継続する作品の企画の場合は、準備期間に2年以上費やすこともあります。ここで紹介したのは、制作が開始されていて、道筋が決まっている作品の制作工程である、ということを覚えておいてください。
アニメ制作に関わることができる職種
アニメプロデューサー
アニメ制作において、ビジネス的な成否に責任をもつ職種です。制作としての実務は行わず、アニメ制作のプロジェクト全体のマネジメントを担っています。
主な業務は、スケジュール・予算に見合った人員、資源・資材の確保、予算の試算などです。
直接的に制作には関わらないものの、監督をはじめとした制作スタッフの任命権ももっていることが多く、作品の方向性に深く関わっています。
ディレクター
制作指揮や現場統括を担う職種です。作品のクオリティに責任をもち、人員のリソース配置など、現場において一定の権限を与えられていることも少なくありません。
企業によっては、「アニメ監督」と呼ばれることもあります。
アニメ監督
仕事内容は、ディレクターとほぼ同じで、制作指揮や現場統括を担っています。
アニメ監督という職種名を使っている会社では、その上位職に「総監督」を置くことがあります。この場合、一つの作品にアニメ監督が何人かおり、総監督が統括をする、という制作形態です。
また、制作のクオリティ担保のために、演出もアニメ監督が兼任するケースもあります。
アニメーター
素材作成を中心的に担う、アニメ制作の最前線ともいえる職種です。
動画マンからスタートし、腕が認められれば原画マンに上がっていきます。
また演出や監督など、アニメ制作の上流工程を担う人達も、一度はアニメーターを経験していることが多く、アニメ制作の多くのキャリアにとって、スタート地点であるとも考えられています。
デザイナー
アニメとしてキャラクターを描き込む際、そのキャラクターの詳細なデザイン設定が必要となります。
三面図を描いて現場で共有するのが一般的で、そのためのデザインを起こす職種です。
オリジナルアニメで必要になるのは当然ですが、たとえ原作でキャラクター設定がされていたとしても、再デザインが必要になります。原作のままでは、アニメとして動きをつけにくかったり、さまざまな制約から、デザイン変更をしなければならなかったりするためで、制作現場に必須の職種です。
アニメ制作ができる企業
アニメ制作会社
アニメの制作を行っている会社には、自社で企画したり、クライアントから企画そのものを請け負ったりする元請け制作会社と、元請け制作会社からカット・シーン・話数単位で制作を請け負う下請け会社があります。
主に元請け制作会社のことを、アニメ制作会社と呼ぶ傾向があります。
自社で企画ができるほどの企業規模をもっており、アニメプロデューサーをはじめ、アニメーター、ディレクター、監督、デザイナーなど、アニメ制作に関わるほとんどの職種を抱えています。
制作スタジオ
元請け制作会社から依頼を受ける下請け制作会社のことを、制作スタジオと呼ぶことがあります。また、工程の一部を請け負い、背景画の制作のみを行ったり、編集や撮影を行ったりする専門スタジオもこちらに分類されます。
制作スタジオは、アニメーターのみ、音響のみといった、少人数かつ各工程に特化した会社が多い傾向にあります。アニメ制作会社は、その性質上、全ての工程を担う人員を抱えている必要がありますが、制作スタジオはその限りではありません。そのため、企業規模が小さくなりがちです。
定期的に人員募集も行われているため、自分がなりたい職種が決まっているなら制作スタジオを目指すのも手段の一つです。
個人で請け負いアニメ制作に携わることも可能
アニメ制作会社や、制作スタジオで腕を磨いて名前を売り、その後独立して個人名義で仕事を請け負う、というパターンもあります。一定以上の経験は必要になりますが、個人で活躍しているアニメーターやシナリオライターは大勢います。
アニメーターの場合は、カット単位で賃金が決まることが多いため、数をこなせる実力さえあれば、会社に所属している時よりも、収入を増やしやすくなる傾向にあります。
納期さえ守れば、強いこだわりをもって、好きなキャラクターの1カットをじっくり描くこともでき、それを魅力に感じて独立する方もいるようです。
アニメ制作の仕事に求められるスキル
専門学校などで専門的な知識を持っていると有利に
専門学校などで学んだ、「アニメ制作」に関する知識を持っていると有利になります。アニメ関連の専門学校があることは知られていますが、現在は、大学でも学べるところが増えており、業界に入る前に知識として体系的に身につけることができます。
学生時代に学んでいなかったとしても、専門学校の外部向け授業に参加する、訓練校で学ぶなどの手法で身につけることは可能です。
職種によってデッサン力や脚本力など求められるスキルが異なる
アニメーターならデッサン力や画力、脚本家やシナリオライターなら脚本力、というように、職種によって求められる専門スキルは異なります。
また、演出家はアニメーターからキャリアアップすることが多いため、演出力だけでなく必然的に画力も求められることになります。
目指す職種が決まったら、該当職種に求められる専門スキルも磨いておきましょう。
スケジュール管理能力
どの職種になるにしても、スケジュール管理能力は必須となります。
アニメ制作は、綿密にスケジュールが決められており、後工程のメンバー確保などもなされています。自分の担当箇所でスケジュール遅延を起こしてしまうことは、作品全体にとって与えるマイナスの影響が大きいのです。
特にテレビアニメの場合、放送に穴をあけることは大きな損害賠償にもなりかねません。スケジュールを遅延なく進めることは重要な能力だと考えられています。
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