株式会社プラチナエッグ 代表取締役 竹村也哉氏が語る「ブロックチェーンゲームの未来と新たな組織体制について」

エンタメ業界のトッププロデューサー/経営者へのインタビュー連載。エンタメ業界へ転職を考えている方たちへ向けて、業界の課題や今後の展開などを探っていく。第36回は、ブロックチェーンゲーム黎明期から参入し、現在は業界の老舗とまで言われている企業を取り上げる。(編集部)

株式会社プラチナエッグ
代表取締役 竹村也哉

コンシューマーゲーム開発のプログラマ、フリーランスでの海外でのブリッジエンジニアを経て株式会社プラチナエッグを起業。フューチャーフォン向け、モバイルデバイス向けのゲーム開発を経て、2017年より仮想通貨エンターテイメント事業を開始。現在は複数本のブロックチェーンゲーム開発を並行して行い、自社開発・運営のCrossLink, CryptoDerbyなどのブロックチェーンゲームの運営, NFTMarket Place の TokenLink, Stable Coin のJPYA/USDAなどの提供も行っている。

ブロックチェーンゲーム黎明期から参入

―貴社の事業内容について教えてください。

 スマートフォン向けゲームの開発・運営などのゲーム全般に関する業務を行っていますが、直近ではブロックチェーンゲームや、NFTマーケットプレイス、その他関連事業など幅広く手がけております。

会社としては今後、仮想通貨の元になるブロックチェーンの技術を利用したブロックチェーンゲームを事業の中心に据えていく方針です。また、NFT Marketを運営するなど、メタバースやNFT関連でも他社に先駆けた事業を展開しています。

―貴社の強みについてお伺いできますでしょうか。

ブロックチェーンやNFTなどWeb3.0に関わる事業において、特に開発運営ノウハウを元にした、企画力・開発力が他社に抜きん出ていると思っております。

弊社はWeb3.0に関わる対応領域が多岐なこともあり、他社様より新たなブロックチェーン事業やNFT開発のご相談をいただくことがあります。

ただ、単純にNFTを作るだけでは売れない時代になってきていますので、弊社であればトレンドを踏まえた上でどのようにすれば売れるのかアドバイスを行なったり、売れるための設計に関してサポートをしながら企画を作り上げていきます。

そして企画を作った後には、それを形にするために開発会社を探さなければいけません。特にブロックチェーンゲームにおいては、知見を持っている会社は未だ少なく、同時に移り変わりも激しい業界なので、開発ができる会社も非常に限られていますが、弊社の場合はそのまま開発まで一貫して行うことが出来ます。

このように全体を通してプロダクトの開発まで行える企業は国内ではほぼ存在してないのではないでしょうか。ブロックチェーンゲームが世の中にほぼない時期から参入していたので、他社よりもノウハウや実績を早く積み上げられたからこそ出来た強みだと思います。

―そんなに早くから参入していたのですね…!ブロックチェーンゲームの市場に参入されたきっかけについて教えていただけますか。

2016年から関わっていたゲーム開発プロジェクトの中で、ICO※1をやろうという話が偶然出たことがきっかけです。

当時、ICOブームが起きていたこともあり、ブロックチェーンや仮想通貨に興味を持ちました。ICOブームは昭和時代のバブルのような状態で、何十億、何百億というお金が動いていましたが、よく分からないものにお金が集まるということに驚き、興味を持って調べるようになりました。

その後、NFTの祖と呼ばれる「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」※2 が発表されたことで、このような活用方法があるのだと気づき、さらにブロックチェーンゲームを発展させたいという想いから、本格的に参入しました。

※1 仮想通貨を新たに発行し、販売することで資金を調達する仕組みのこと
※2 猫のNFTを仮想通貨で売買・収集するゲーム。ブロックチェーン技術によって猫のNFT自体に希少性が生まれ、1000万円以上の価値が付くNFTも登場し話題になった。

ー今後注力していきたい事業について教えてください。

Web3関連、特にブロックチェーンゲームやメタバースなどには積極的に関わっていきます。またDAOに向けても注力していきたいと思っています。

未来の企業組織は大多数が「DAO」になる

ーDAOについて詳しくお聞かせいただけますか…?

わかりやすくいうと、社長やリーダーがいなくともコミュニティの力により自動的に回っていくような組織、です。何かを決めるときは参加者の投票で決定し、DAOが得た利益も参加者に公平に分配されます。

もう少し詳しく話しますと、DAOの参加者はDAO独自の仮想通貨を保有しています。そして、独自の仮想通貨の保有量に応じて投票権を得たり、DAOが得た利益を受け取れるようになっています。

現在は投資やゲームだけでなく、様々な分野でもDAOが誕生しています。

 ―社長がいない会社ですか…。DAOに注力していきたい理由もお聞かせいただけますか。

近い未来には企業活動の様々な部分において、DAOの要素が入ると思っているからです。

私は、トップダウン性の強い組織よりも権限の委譲された分散型の組織の方が、生産性・競争力・影響力を強く持つと考えています。

DAOは非常に分割された組織運営を実現できます。今までの組織よりも分散性が強い組織が出来上がるため、結果として今までとは異なるタイプの総合力が高い組織が増えてくると思っています。そして、その流れを企業は無視することはできなくなっていくでしょう。

これはブロックチェーン事業を行う企業だけではなく、全ての企業で起こりえることだと考えています。

1990年〜2000年代初期にはインターネットバブルが起きました。最初はインターネット企業というのがあったわけですが、今ではインターネットを使っていない企業の方が少ないですよね。ブロックチェーンも同じ過程を辿ると考えています。

DAOに相当するものはオープンソースです。オープンソースも当初小さい流れだったものが、今や多くの会社でオープンソースのソフトウェアが使われています。

DAOも同じように今後普及していき全ての会社がDAOになることはなくても、かなりの数の企業がDAOになるのではないかと思っています。

課題解決の糸口はブロックチェーンゲーム

―ブロックチェーンやNFT市場における課題は何だとお考えですか。

認知度が低いために、社会的信用度が低くなっている、つまり「うさんくさい」と思われていることですね。

これはもちろん認知度が上がることで解消すると思いますが時間が必要です。よく知らない、よく分からないものは怪しいと思ってしまうのは人間の習性です。

インターネットの黎明期にも「インターネットは素晴らしい」と言われても、「なんだかよく分からない……本当だろうか」と思う人がいたはずです。

ブロックチェーンは、まだまだその段階にあると思います全年代の会話の中にブロックチェーンやNFTという単語が当たり前に飛び交うようになればインターネットのように受け入れられると思っています。

―そのような課題がある中で、ブロックチェーンゲームについてどのように考えていますか。

ブロックチェーンゲームは、ブロックチェーンが一般の人達にリーチするための最初の一歩になり得ると思っています。特に若年層であればあるほどリーチする可能性が高いです。

認知度を上げるには、ゲームが手っ取り早いと思うんです。ブロックチェーンはリテラシーが高い人でないと、理解するまでに非常に時間がかかりますが、ゲームであれば触れやすく、自然も理解も進むでしょう。

ブロックチェーンゲームがブロックチェーンにおける課題解決の糸口となると考えています。近々でブロックチェーンゲームが伸びるかというとはっきりとは言えませんが、5年先10年先には間違いなく伸びると思っています。

その未来では通常のゲームやソーシャルゲームなどと融合して、ブロックチェーンゲームではなく「ゲーム」と呼ばれるようになる未来があると思います。

求められるのは「取りあえず動いてみる」が出来る人材

―ここからは竹村様ご自身のお話を伺いたいと思います。エンタメやゲーム業界に飛び込んだきっかけを教えてください。

「このまま一生研究をしているんだろうか…」大学院で生物の研究をしている時にふと考えてしまったんですよね。

研究職の場合、一生のほとんどを研究に費やすことになります。どうせ一生の時間が取られるなら好きなゲームの業界に入ろうと思って中退したのがきっかけです(笑)。

その後知り合いのゲーム会社に入社し、気がつけば今代表として会社を持っています。

―今までお仕事をする中で苦労されたエピソードはありますか。

難しいですね……。開発で忙しかったこと、人が辞めて大変だったこと、お金がなくて大変だったこともありましたが、やはり会社の文化をつくるということでしょうか。

「これからはブロックチェーンゲームをやる」と話をした時に、「そんな胡散臭いものをなぜやるのか」と、社員が結構辞めたんですよ。結果的にブロックチェーンゲームの未来を信じる人が残ったのですが、1~2年は人が辞めては新しい人を迎えてという状態の中、社内文化をつくっていくのが大変でしたね。

 ―今後、エンタメ市場やWeb3.0関連の市場において、どのようなスキルやマインドを持った方が求められると思いますか。

「取りあえずやってみたい」という人は求められると思います。新しいことが好きで、自分から学習出来る人、取りあえず動いてみるタイプの人ですね。

また、既存のビジネスのノウハウを持っていて、それをweb3に応用しようと考えている方も求められる人材だと思います。なんらかのビジネス経験をブロックチェーンやWeb3.0につなげるということが今後増えていく筈です。ブロックチェーン・Web3.0以外の既存のビジネスを知っている人は、未開拓領域ごとにそれぞれ求められています。

―竹村様がパートナーとして一緒に働きたいと思う人物像についてお聞かせください。

 状況判断をしてリスクを理解した上で「取りあえずやってみる」と動ける人ですね。また、常に現状をよくしようと考えていることも大事です。

―それでは最後の質問です。竹村さまにとってエンタメとは?

 一言で言うと「人を楽しませること」です。
私がゲームの仕事を始めた当初に

「相手を楽しませることが好きじゃないと、この業界には向かないよ」

言われたのですが、まさにその通りだと思います。エンタメにおいては何を作るにあたっても、どんな人が遊んでくれるのか、どういった部分を面白いと思ってくれるのかを常に考えていく必要があります。

どの立場であろうと人が好きだと思うこと、楽しいと思うことを考え続けられることが必要だと思っています。